つばさの軌跡

京大卒。新卒の2018年春、鳥取県智頭町に移住し、社員2名の林業会社に就職。林業家を志す。働くこと、食べること、寝ること、話すこと、住むこと...。自分の人生の時間を分けることなく、暮らしの所作、その一つ一つに丁寧に向き合って、精一杯生き抜くことが目標。

「人見知り」という予防線

僕は、初対面が苦手だ。

初めて誰かと会う前は、気が散って、集中できなくなる。

ひどいときは、腹を壊す。

 

自分がどう思われるかとか、

話が途切れたらどうしようとか、

おもしろくないって思われたくないとか。

 

そんなことを考えて、2年前まで、

初対面のひとには、こう言うこともあった。

 

「僕、人見知りなんだよね(笑)」

 

先に人付き合いが苦手と言ってしまえば、

向こうもそうやって扱ってくれると思って。

そう思われる不安を、あらかじめ自分で先回りしておくことで、

そう思われたときの、傷心を最小限に抑えようと思って。

 

ただ、これはもう、やめた。

 

自分の気持ちは、話し相手からしたら、ある意味どうでもいい。

自分が傷つかないことに終始するよりも、

いま、相手がなにを思っているか。

その思いやりを持とうと思ったのだ。

 

予防線は、話し相手に失礼だ

 

これはひたすらに、

自分の想像力が足りてなかっただけなのだけど、

「人見知り」という予防線は、話し相手に失礼だ。

2年前に、人に言われて気付き、もうやめようと決めた。

 

僕のなかでは、「話し下手」くらいの意味で、

「積極的に話さないように見えるけれど、会話は好きだよ」と伝える感覚でいた。

 

けれど、いまから話そうとしている人に「人見知り」と言われた人からすると、

「え、話していいんかな」ってなる。

話すの苦手な人に、話しかけちゃ悪い気もする。そう思うだろう。

話す前から、そんなことを言うのは失礼だ。

相手からしたら、話す気が失せる。

 

「人見知り」という予防線は、

僕にとっては、話し相手と近づくための、一種の自己開示でもあったわけだけど、

逆に、それが人を遠ざけることもあるのだ。

ということに気付いた。

 

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 人見知りしていれば、相手が寄ってくる。そんな愛くるしさがあれば良いけれど...。

 

いろんな予防線を、やめてみる

 

「人見知り」以外にも、予防線はある。

 

例えば、夢を語るとき。

「実現できるかわからないけど」とあらかじめ自分で言う。

あるいは、言葉だけじゃなく、態度や、表情なんかでも。

 

予防線は、自分を守るもの。

それ自体は、僕は別にいいと思う。

ひとに入られたくない部分だってある。

 

けれど、それじゃ、いつまで経っても変わらない。

 

「人見知り」と予防線を張るひとは、きっと、人が好きなひとだ。

だからこそ、緊張に負けずに、そのまま話してみてほしいなと思う。

僕も、そうあれるよう、いろいろと工夫してみている。

 

ほんの少しだけ、予防線を、やめてみる。

そんな日があっていいと思う。

そうすることで、またほんの少しだけ、何かが変わるだろう。

そんな気持ち。

 

 

つばさ

「できること」をひとつずつ増やす

僕はまだ、何もできないのだと思う。

いや、正確には、何も提供できないのだと思う。

 

バイトやインターンで、

「あなたは何ができますか」という質問に、

答えられるひとはどれぐらいいるだろうか。

 

僕は、胸を張って答えられた試しがない。

 

なぜなら、この質問の意図は、

「対価をもらえるだけの価値のあるものを生み出せますか」

と同義だから。

 

僕は、文章、カメラ、イラレ、動画、イベント企画。

それなりにやったことはあるけれど、

それを報酬をもらうものとしてやったことはない。

 

その意味で、僕はまだ「何ができる」とは答えられない。

 

 

「役に立ちたい」だけでは、役に立たない

 

素晴らしいと思える会社に出会って、

「何か手伝えることありますか」と聞いたはいいけれど、

「何ができる?」と聞かれて、困ったことは何度もあった。

結果、何もできずに、やりきれない想いだけが残った。

 

結局、わかった。

 

「役に立ちたい」だけでは、役に立たないのだと。

 

もちろん、全く役に立たないわけはないのだけれど、

役に立てるところは限られる。

 

特に、共感できる理念を持つところは、

小さな規模でギリギリでやっているところも多く、

即戦力でないと、雇っている余裕はない。

 

そこには、やはり想いだけでは、どうにもならないところがあるのだと思う。

 

「できる」ことをひとつ、自分の基礎に据えることは、

チームとして「これをしてくれる」という、最低限度の信頼に繋がる。

そう思う。

 

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 基礎からひとつずつ、積み上げよう

 

まずは「生産手段」を持つこと

 

マルクス曰く、

「労働力が商品になる」には2つの条件がある。

 

①労働者が自由であること。

②労働者が「生産手段」を持たないこと。

 

この2つが揃うと、

人々は、自身の労働力を、企業に売るしかない。

 

だからこそ、企業に縛られずに生きていきたいのならば、

自身で「生産手段」を持つ必要がある。

逆に言えば、「生産手段」を持てば、

企業に属さなくとも生きていける。

 

もちろん、ここでは、

企業で働かないことを推奨しているわけではない。

 

当たり前のようだけれど、

学生の立場で、将来のことを考えていると、

自分がどんな生産手段を持ち、どんな価値を社会に提供する人になるか。

それを忘れてしまいそうになるのである。

 

企業に入るも良い。入らないも良い。

けれど、自分が5年後、10年後。

何ができるようになっているか。

それによって、将来、やりたいことができたときに、できるかどうか。

それが大きく変わると思う。

 

 

まずは3年。まずは5年。

「できること」をひとつずつ増やして、

価値を生み出せるひとになれるよう、精進。

 

つばさ

百点の空想よりも、十点の実物を

久しぶりに、本を読んで。

多少ネタバレあります。

 

何者 (新潮文庫)

 

「就活」がテーマだったけれど、

そこから広がって「大人になる」ことを、

改めて考えさせてくれた本です。

おもしろかった。

 

6人の大学3年生の夏から、

物語は就活を軸に展開していきます。

 

それぞれが、全員違った態度で就活に臨むのですが、

途中の話は全部飛ばして。

 

すごく印象的だったのは、

家庭に事情を抱え、自分がしっかり就職しなきゃと覚悟を決めた女の子が、

自分は会社が合わないから、就職なんて無理と言い続ける男の子に言った言葉。

 

 

自分の人生を一緒に見てくれる人

 

生きていくことって、きっと、自分の線路を一緒に見てくれる人数が変わっていくことだと思うの。

『何者』朝井リョウ著(新潮文庫p250

 

人生を線路に例えると、

高校生までは、親や先生、友達が、自分の進む線路を一緒に考えてくれた。

 

けれど、大学を経て、これから社会へ出るとき、

いよいよ僕らはひとりで自分の線路を見なきゃいけない。

親も、先生も、友達も、

いっしょに線路を見て、いっしょに考えてくれる人は、いなくなるのだ。

 

そして、社会に出てから、やがて結婚し、子どもができたとき、

今度は、誰かの線路をいっしょに見る。

歳を重ねるにつれて、そんな風に立場が変わっていく。

 

この言葉は、このことを指している。

 

それは、頭ではなんとなくわかっていても、

僕もまだ、どこか抜け出せてないんじゃないかなと。

 

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同じ線路を同じ目線で見てくれる人は、もういなくなるのだ。

 

百点の空想よりも、十点の実物

 

十点でも二十点でもいいから、自分の中から出しなよ。自分の中から出さないと、点数さえつかないんだから。

(中略)

百点になるまで何かを煮詰めてそれを表現したって、あなたのことをあなたと同じように見ている人はもういないんだって

『何者』朝井リョウ著(新潮文庫p254

 

自分の線路をいっしょに見てくれる人がいなくなる。

だからこそ、僕らはなにかをつくっていかなきゃいけない。

 

留学や、休学や、インターンや、

そんなことでは、まだまだ百点のものをつくることはできないけれど、

なにかを自分のなかから出さなければ、誰も僕のことを見てくれないのだ。

 

頭のなかで、百点のものを空想していても、

外に出して、人の線路の上に置かなきゃ、誰もそれを、見てくれないのだ。

 

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この言葉が響いたのは、

ともすれば、僕のブログも「百点の空想」に成り得てしまうなという危機感。

書いた言葉を、十点の実物として外に出すか。

百点の空想として、頭のなかだけで満足してしまうか。

 

どちらにも成り得るもので、空想を語って、その過程づくりに甘えることはせず、

少しずつでも、誰かに役に立てるだけのものを、身を削ってつくっていこう。

そう思いました。

 

 

他にも、6人の就活生それぞれの生き方から、

共感できるところ、共感できる自分の欠点が多々あって、

改めて自分を見つめ直せる小説です。

特に同世代には、

あるいは、いまの就活を知らない人も楽しめると思います。

 

何者 (新潮文庫)

 

 

つばさ