林業には「ロマン」がある
林業は、サイクルが長い。
苗を植えてから、十分に木が育つまで、
少なくとも50年はかかる。
ましてや、
それまで何もしなくていいわけじゃない。
植林時、密に植えた小さな苗は、
10年ほど、下草刈りを春から夏にかけて繰り返し、
5年や10年ごとに、間伐(間引き)をする。
手入れを怠った林は、過密になりすぎた木々が、
お互いに光を奪い合い、空を枝葉で覆う。
それでも十分には成長できずに、
木の幹は細く、林の中は暗く、地面が剥き出しになる。
50年経っても、径は小さく、建築材にはならず、
チップやバイオマスに、その大半が使われる。
結果、価格は安い。
戦後、拡大造林(全国的にスギ・ヒノキの植林を促した政策)によって、
日本の山は、スギやヒノキの林が急増したが、それがいま、50年以上経つ。
しかし、先に言ったような手入れがされてこなかった林が、多く存在する。
手入れの遅れたスギ林。奥は林内に光が入るが、手前は頭上が覆われてどんよりと暗い。
なぜ、こんなことが起こるかと言えば、やっぱりサイクルが長いから。
50年とは、僕がいま植えた木を、
僕の子どもが手入れをし、
僕の孫が伐採をする期間だ。
50年後は、僕は74歳。
まったくもって、想像がつかない。
5年先の自分すら、わからないのだから。
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つまり、林業は、決してひとりじゃ完結しない仕事だ。
この時代 ー林業家が減り、木材消費量が落ち、
手付かず林が増え、花粉が飛び交い、土砂崩れが頻発する。
山や木が、ますます人から離れていくこの時代に、
林業をすること。木と向き合うこと。
それは、それでも人の暮らしに、人間の生に、
木、植物、森、山が必要だと信じ、
また、その信念を、不確かな未来のなかでも、
きっと、受け継ぐ人間がいるはずだと、信じ抜くことだ。
漫画・ワンピースで、ルフィたちが空島へ向かうとき、
クリケットは、こう伝えた。
「"黄金郷"も"空島"も!!!
過去誰一人"無い"と証明できた奴ァいねェ!!!
バカげた理屈だと人は笑うだろうが結構じゃねェか!!
それでこそ!! "ロマン”だ!!」
100年後の、立派な木、綺麗な山、美しい森を夢見て、
今日もまた、一本の木と、向き合う。
だから、林業には、ロマンがある。
始めて数ヶ月だけれど、そう思っています。
もちろん、ロマンは、追い求め続けなきゃ、手に入らないだろうから。
自分の技術を高めること、美しい森を考えること、仲間を探すこと。
その努力を怠ってはいけないのだろうけれど。
「人事を尽くして、天命を待つ」
そんな言葉が似合いそうな。
これから、まだまだ、人事を尽くさねば。
明日もまた、精進。
つばさ